Locals神がやどる「日本刀」
3つの要素から見えるその魅力とは・・・

みなさんは刀鍛冶という言葉を聞いたことがありますか?

鉄の塊を火にかけ、金槌で叩くところからはじめて一本の刀に仕上げる、刀剣専門の鍛冶職人のことです。

以前は日本全国に数多くの刀鍛冶が存在しましたが、現在では300人ほどとなってしまいました。今回はそんな数少ない刀鍛冶の一人、中西裕也(なかにし ゆうや)さんをご紹介します。

将大鍛刀場中西 裕也

Harvest Journey Kameoka

刀との出会い

中西さんは、2014年亀岡市にて「将大鍛刀場(まさひろたんとうじょう)」を立ち上げ、日本刀の制作や小刀づくり体験を中心に活動されています。

そんな中西さんが刀の道に進むきっかけは何だったのでしょうか?

「小さい頃、京都国立博物館に連れていってもらって、そこで見た本物の『刀』に衝撃を受けました。きれいだな~、かっこいいな~と思いましたね。」

 

本物の刀を見た時から、「刀」へ強く憧れた中西さんは、将来を考えはじめた中学生ごろ『刀をつくる人(刀鍛冶)になりたい!』と思うようになったそうです。

しかし高校を卒業後、中西さんは一度、大手自動車メーカーの工場で働き始めます。

なぜなら刀鍛冶を目指すには、まずは働きながら師匠を探す必要があったからです。

「師匠を探す」といっても、インターネットで情報を集めるのが難しい時代。「刀」に関する本をもとに、日本の刀鍛冶について情報を得ていたのだとか。

「たまたま展示会で見た図録をパラパラ見ていると、1人の刀鍛冶に目がついたんです。今となっては、なぜその人だったか分かりませんが、その時はものすごく『この人の弟子になりたい!』と思って手紙を書いたんです。」

誠意が伝わるようにと、炭をすって筆で書いたという手紙に、1カ月後に「いいよ」と返事が返ってきたそうです。

こうして中西さんは20歳の時、福島県にいる師匠のところに弟子入りが決まりました。

修行の7年間

そんな中西さんの「刀鍛冶修行」とは、どういうものだったのでしょうか。

「実は、最初の1~2年はずっと犬のお世話か、大工仕事をしていました。師匠の家は犬が7匹いたんですよ。7匹もいると、散歩も1日2周しなきゃいけないでしょ。まあ私は面倒くさいので、7匹同時に散歩してましたけどね 笑」

弟子に入ってしばらくは、刀に携わることができず、身のまわりのお世話をしていたそうです。とはいえ、犬小屋をつくったり、お庭のつくばいを作ったりと結構たのしんでいたという中西さん。

2年目からは、身のまわりのお世話も続けながら、少しずつ刀のこと教えてもらえるようになったそうです。

「親方は手取り足取り教えてくれるタイプではなかったので、主に親方の姿を見て学ばせてもらっていました。実際に自分もやってみてできなかったら毎日犬のえさをやりながら『何がだめだったんだろう』と考えていましたね」

師匠に全てを完璧に教えてもらうのではなく、「一度は自分で考えて学ぶ」ことの大切さを知った中西さん。

「刀鍛冶の仕事は、火や炭を扱うため『感覚』が非常に大事です。だから教えてもらったことだけをやって、考えなくなってしまったら『感覚を研ぎ澄ます』という訓練にならないんです。」

刀鍛冶として生きる

そんな「刀鍛冶修行」はとても大変だったのでは?

「独立してからの方が大変でした。自分で責任をもって道具や設備をととのえて、運営していかなきゃいけないので」

実際に、刀づくりで生活をしていくのはとても大変なのだそう。一度は刀工を志して刀工の資格が取れたとしても、仕事として成り立たず挫折してしまう人が多いのだとか。

しかし、中西さんはこれまで辞めようと思ったことはないのだとか。

「私はあんまり将来のこととか深く考えなかったんですよね。毎日自分と向きあって、少しずつうまくなっていくのが楽しくって。考える暇もないくらい夢中でした」

刃文を通してみる3つの要素

そんな中西さんが思う「刀の魅力」とは何なのでしょうか。

「刀の魅力を語る上で、大切な要素が3つあります。それは『武器として、美術品として、精神的な支えとして』という3つです。」

この3つの要素は、日本刀の特徴である「刃文」から分かりやすく見てとれます。

「『武器として』刀は固いほど切れやすくなります。しかし固すぎると折れやすい刀になります。武士の刀が折れてしまったら、戦うことができず、途端に殺されてしまいますよね。

そのため『刃』の部分だけが固く変化するように『焼き入れ』という作業を行います。その鉄の固さの違いによって現れるのが『刀文』です。」

輝いている「刀文」は見る人を魅了しますが、その美しさの裏には「切る」という役割を果たす上で大事なポイントが隠されていたんですね。

「その『刀文』をせっかくなら美しくするようにきれいに研いだのが『日本刀』です。これが今でも、日本の刀が『美術品として』根づよく人気である要因です。」

「昔から日本人が刀をきれいに研いでいたのには、美しさだけではなく、そこに『神様が宿っている』と考えていたからでもあります」

体を悪くしても、医学的なことなど何もわかっていなかった時代。人々は刀の輝きと武器としての強さから「神様」を重ね、『精神的な支えとして』安心感を得ていたのだとか。

昔は鉄がとても貴重だったため、光っている鉄が珍しく、神々しさを感じるというのは、現代の私たちでもなんとなく分かる気がしますね。

日本文化と小刀づくり体験

現在、SNSなどの普及で世界中の文化を知ることができる一方で、日本の文化の象徴である「日本刀」が多くの日本人から不要のものになりつつあると中西さんは懸念しています。

「今は情報が多すぎるせいで、自分の存在を見失う人も出てくるのではないでしょうか。

そこでこれから、多くの日本人が『日本人とは何か』を考え、自分のルーツである歴史や文化を振り返ったとき、『日本刀』と出会い、その信念にふれるようになるのではと思います」

日本の歴史的な意味でも、また日本人の精神的な意味でも、私達の暮らしに息づいてきた「日本刀」が、現在の混沌とした時代だからこそ、再びその存在に価値を見出し、またその価値が見直されてきているのかもしれません。

将大鍛刀場で、日本人のルーツでもある『日本刀』に触れてみてはいかがでしょうか。

将大鍛刀場では、一般の方に刀の魅力を知ってもらうため、「小刀づくり体験」も実施しています。

日本文化に触れることができる貴重な体験です。刃渡り15cm程の小刀を3~4時間でつくることができます。

①火造り:炉で鉄をあたためて、ハンマーでたたきながら形を整えていきます。ここで長さや先のとがり具合まで調整します。

②焼きなまし:あたたまった鉄を灰の中に5分程入れて熱を冷まします。灰の中に入れることで空気に触れず、ゆっくり冷めることで鉄のストレスを減らしていくことができます。

③土取り(つちとり):鉄の表面に土を塗っていきます。ここで「刃」の部分を避けて塗ることによって、④焼き入れ の時に「刃」の部分だけ固くなります。

④焼き入れ:鉄を炉で再度あたため、良きタイミングで水に入れ急激に冷まします。そうすることで鉄が固く変化します。土を塗った部分は冷めるスピードが遅くなり、鉄が固く変化しすぎるのを防ぎます。

⑤研磨・銘入れ:最後に、研ぎと磨きを中西さんに行ってもらい、好きな文字を入れてもらったら完成です。

 

他ではなかなかできない体験ですので、ぜひ皆さま訪れてみてはいかがですか?

おしゃべり好きの中西さんが、軽快なトークでお迎えしてくれます!

Harvest Journey Kameoka

Turn your phone

スマートフォン・タブレットを
縦方向に戻してください