Localsここだから、今だから、食べられるもの
暖簾を代々ひきつぐ「京料理 松正」

亀岡市篠町。JR馬堀駅・トロッコ亀岡駅から徒歩15分のところに京料理 松正(まつしょう/以下、松正)があります。
2021年で創業85年、この亀岡の地で営業をはじめて40年となる松正では、自然豊かな亀岡の食材をふんだんにつかったこだわりの京料理をいただくことができます。

 

 

客席からは立派なお庭が見えます。お庭を眺めていると右手に朱色の鳥居が目にとびこんできます。

 

この鳥居は京都市内で創業した松正が高度経済成長に伴い、2店舗目を亀岡市にオープンするべく、引っ越しの車をはしらせていた際、峠で狐を2匹ひいてしまったことに由来するのだとか。その時の狐がここに神様として祀られているそうです。

そんな松正の4代目 小笹 正義(おざさ まさよし)さんにお話しをお伺いしました。

京料理 松正小笹 正義

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松正のお料理とは

 

松正は仕出し屋として発展してきましたが、仕出しの需要が減少してきた30年程前から店内営業もスタートさせました。

そのため小笹さんの毎日は、まず仕出しをつくるところからはじまります。

それが終わったら昼の店内営業、片付け、夜の営業というように1日が進んでいきます。

「仕出しとお店でのお食事とではちょっと味付けが違うので、作ろうと思っても一緒に作れないんですよ」

同じような料理でも、醤油や塩、砂糖などの分量を微調整しているのだとか。

「素人目にはわからないですね。でもそれでいいんです。お客さんには『おいしい』という一括りでとらえられても、そこにどれだけ手間を掛けるか、どれだけ工夫するかというのが料理人としての我々の仕事なので」

料理人として生きる

 

毎日料理人として仕事をしているのが楽しいという小笹さん。

「仕事に対して良くも悪くも、あんまり普段から仕事感がないんですよね。仕事をしていても毎日遊んでる感じなんです。毎晩『早く明日になって明日のお客さんに料理が作れへんかな』と思って寝るんです」

とキラキラした目で語る小笹さんですが、昔からお料理がすきだったのでしょうか。

「いや、魚は気持ち悪くて高校生まで触れなかったです。絶対こんなのさばくなんてできないと思ってました」

高校までは野球を頑張っていたそうで、家が代々料理屋じゃなかったら中学か高校で野球を教えたかったとか。

しかし小さい頃から家族に市場に連れて行ってもらったり、お料理を食べさせてもらったりしている中で、自然と料理人の道を選んだと言います。料理の専門学校に行くと決めた高校3年生の冬、お店を手伝うようになり自然と魚をさばくのもできるようになったのだそうです。

 

お料理を通して見せたいもの、伝えたいこと

 

「松正の料理は『ここでしか食べられない』ということにこだわっています。だからもちろん漬物からすべて自分達で手を加えています」

今回ご提供いただいたお食事の中で、鹿肉をつかったかぶらむしについてお話しを伺いました。

「この鹿肉をのせたかぶらむしには人参、シイタケ、山芋が入っているのですが、これは鹿が山の中で普段食べているものを表現しています。この一皿に鹿の生態系を落とし込ませたいと思って作ったんです。」

獣害の問題や自然の持続可能性をうったえる声が聞こえてくる中で、料理人としてできることを考え、こういう表現方法が浮かんできたのだとか。

 

旬のもの、地元のもの

 

松正でつかう食材のほとんどは、旬のもの、地元丹波のものを使用しています。

秋から冬にかけてとても霧が深いことで有名な亀岡市、深い霧の中で美味しく育つ丹波野菜は自慢の食材です。

また亀岡市には、酒や醤油、味噌などの醸造も充実しているため、ほとんど亀岡市だけで質の高い食材が揃うのだそう。

また毎日のメニューは地域から仕入れられる充実した食材によって、少しずつ内容が変わります。1日として全く同じお料理がでることはないのだとか。

またお客さんによっても好みをその場で見極め、お出しする料理に少し工夫を加えることもあるのだそう。

「『こういうのもありますけど、どうしましょうか?』とあえて聞いてみたり、年齢層をみたり、地元か観光客か、新規かリピーターかということでも少し変えています」

ここでしか食べられないもの、今しかたべられないものにこだわっているため、お客さんがリピーターとなり、また新たなお客さんを連れて来てくれることも多いのだとか。

 

コロナ禍において…

 

2020年には新型コロナウィルス感染拡大に伴い、客室にはだれもお客さんが来られないこともあったのだとか。

多くの飲食店が閉店をよぎなくされる中でも、松正はもともと仕出しを中心に営んでいたという強みを活かし、多くの仕出しの注文をとり営業されていました。

松正を継いで4代目になる小笹さんですが、このコロナ禍での危機を、2代目のおじいさんの時代に戻ったようだと表現されました。

「松正はこれまでにも、時代の流れとともにいろんな危機があったんだと思うんです。でもその危機を都度乗り越えてきているんで。2代前に時代が戻ったなら、2代かけてまた戻したらいいと思うんです」

この小笹さんの力強さの要因には、85年つづく松正だからこその「家訓」に支えられたと言います。

「よく考えたら、小さい頃からずっと何があっても『店は閉めたらあかん』って言われていたんですよ。料理人は料理作ってなんぼ。どんな外的要因があっても立ち向かって暖簾は守らなきゃいけないって」

暖簾を受け継いだ小笹さんがこのコロナ禍を乗り越えられるために用意された「家訓」だったのかなとおっしゃっていました。

 

世界中に松正の料理を伝えたい

そんな小笹さんに今後やっていきたいことについて聞いてみました。

「私が今後やりたいことは、世界中の人に亀岡ってこんな食材があるんだよとか、こんな郷土料理があるんだよってことを感じてもらいたいです」

2019年には地元の石材店や陶芸家とともにローマを訪れ、各々の技を披露する機会があったといいます。

江戸時代から伝わる十字で仕切られた松花堂弁当をつくり、召し上がってもらったのだとか。

「日本から食材を持っていくわけにはいかないので、4日間の滞在の中で3日間はずっと市場とキッチンを行き来して、日本とローマの食材の違いに苦戦しながら4日目の本番にやっと間に合わせた感じでした。あの時は自分でもよくできたなと思っています」

水も日本の水に近いミネラルウォーターを探し、地元のお野菜を少しずつ和食にあうように調整していった結果、9割ぐらいは普段つくる松花堂弁当に近づけたのだとか。

現地では大絶賛を受け、同年代の料理人とも仲良くなり日本で再会する約束をした小笹さん。残念ながら日本で再会予定だった2020年は、新型コロナウィルス感染拡大に伴い延期となってしまいました。

「海外との行き来が自由になったら、松正の料理をまたいろんなところで披露したいです。そしてぜひ松正を知ってもらい、亀岡に食べに来てほしいです。うちは近くに嵐山でも、保津川下りでも観光できるところたくさんありますから」

亀岡市篠町という素敵な地にたつ京料理 松正。

そしてそこで信念をもって、毎日楽しそうにお仕事をしている小笹さん。

京都にお越しの際は、亀岡で、小笹さんの思いのこもった『京料理 松正』のお料理を味わってみてください!

 

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