Locals楽器職人がつくるクラフト小物
つくる喜びにあふれた「松永弦楽器工房」

京都府亀岡市千歳町。1300年の歴史があり「縁結び神社」としても親しまれる出雲大神宮のすぐそばに「松永弦楽器工房」はあります。無垢の木をあしらったオシャレな外観から、ここでものづくりをされている作家さんのセンスの良さが見えます。

「弦楽器工房」という名前の通り、もともとは楽器を作っていた工房です。今は木製のペンダントやアロマボトル、名刺入れといったのクラフト小物を製作・販売しています。

ここで作られる木でできた小物たちは、見た目にやさしく、触れてほんわかする、心あたたまる商品ばかりです。

今回は、そんな松永弦楽器工房の松永尚悟(まつながしょうご)さんにお話しをうかがいました。

松永弦楽器工房松永尚悟

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やっぱりつくる仕事がしたかったんです

福岡県出身の松永さんは、大学でデザインの勉強をされた後、家具をつくる会社で設計の仕事を経験し、その後大手住宅メーカーで営業の仕事をされました。

「住宅メーカーの営業の仕事は、深夜1時頃まで続くのが当たり前で、4年くらい働いたんですけど、十二指腸潰瘍になって入院してしまいました」

激務をこなす中で体をこわした松永さんに奥様が「もう好きなことをしたら?」と言ってくれ、その言葉に背中を押されて退職されたそうです。

「僕はやっぱりつくる仕事がしたかったんですね」と改めて、ものづくりへの思いがとても強いことを確信した松永さんは、雇ってくれる工房を探していろいろな工房を訪ねていきました。

楽器の世界へ

「バイオリンのあの形って300年ぐらい変わらないでしょう? それが、すごく魅力的に感じたんですよね」と完成された美しさに魅かれて楽器づくりに挑戦することにした松永さん。コントラバスやチェロを製作する茶木弦楽器製作所に就職されました。

「楽器づくりをしてみて分かったのですが、僕はとんでもなく器用だったようです。社長が言ったことは全部こなしてしまいました。もとは農家の次男坊で、今までピアノすら触ったことなかったんですけどね」

と自画自賛してしまう程、松永さんは初めての楽器づくりにも関わらず、器用に仕事をこなし、工場長にまで抜擢されます。ほとんどの職人が専門学校を卒業している中での快挙です。

そして、製作所に入社して6年後、松永さんの当初からの夢であった自身の工房を持ち独立することを決意します。

1995年、奥さまのご実家のある亀岡で「松永弦楽器工房」を設立しました。

思わぬ依頼で、クラフトの道へ

工房を設立した後、楽器の仕事をする中で、「楽器つくっているなら、音が出るようなお土産作ってよ」と沖縄県竹富島の村おこしをプロデュースしていた友人から、建築廃材をつかったお土産の製作依頼が飛び込みます。

この依頼がきっかけで、バードコール(鳥笛とも呼ばれる鳥のさえずりの音がする木製の道具)の製作をはじめた松永さん。

廃材をたまご型にしたバードコール、題して「さえずりたまご」は瞬く間に大人気になりました。 

やがて竹富島の廃材だけではなく、楽器づくりで出た端材でつくった小物も商品化。これがきっかけで、小物の製作にも力を入れていきます。

 

自分オリジナルを追い求めて

楽器をつくっていると「弦楽器はヨーロッパのもんだよな」というモヤモヤが消えなかったといいます。

「ヨーロッパの楽器を日本人の自分が輸入した材料でつくって意味があるのか。生まれた土地で、その土地の人が作るのが一番ナチュラルなんじゃないかって。どれだけ情熱を楽器に注ぎこんでも、なんか違うよなって思ってたんです」

そんななかでクラフト小物をつくり始めた松永さんの気持ちが変わり始めます。

「小物をつくっているとすべて自分の創作なんですよね。これしかないもの。僕が作っているからすべてが僕だけのオリジナルなんですね。結局ね、オリジナルデザインがやりたかったんですね。売れても売れなくても、自分が考えたものを作りたかったんです」

楽器をやめてクラフトに集中することを決めた松永さん。それによって「職人」として作るだけではない、オリジナルのものをつくる「作家」としての喜びに気づいたそうです。

初めてのクラフトフェアで、驚きの売り上げに

最初に製作依頼をしてくれた友人から「クラフトフェアにでてみたら?」と言われ、信州でとても人気のクラフトフェアに応募し偶然にも合格。初めてのクラフトフェアだったにも関わらず、ほとんどの商品が売り切れ、本人もびっくりしたそうです。

クラフトの売り上げが少しずつ伸びてくる中、楽器の売り上げはリーマンショックをきっかけに少しずつ下がっていました。なかなか踏ん切りがつかなかったものの、クラフトの売り上げがある程度の成果をあげた時、きっぱり楽器づくりをやめた松永さん。

「もうその時は、全然楽器への未練はなかったですよ。本音は、クラフトやっている方が楽しかったんですよね。楽器をつくっている時は人とも全然話さなかったし。地元の友達からも、楽器作っている時は近寄れなかったって言われました。相当集中してたんでしょうね(笑)」

クラフトフェアから見る、作家としての生き方

クラフト小物の主な販売先は、インターネットとクラフトフェアでの販売です。

2020年、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、多くのクラフトフェアが中止となりましたが、9月末に久しぶりに開催された新潟でのクラフトフェアに万全の感染対策の中で参加されたそうです。

「久しぶりだったから、顔見知りの作家さんやお客さんと『みんな生きてたかい?』とか言って、近況報告をしあってね」

クラフトフェアでのこういった交流がとても楽しいのだとか。

「作家同士の会話ってなかなか面白いですよ。どこかみんな共感して、波長があうんです」

そんな作家さん達の性格をとても『カラッ』としていると表現する松永さん。

「みんなクヨクヨしないんです。売れようが売れまいが『まあいいか!』みたいな感じでね」

そういう人が作家になろうとするのか、作家という仕事がそういう性格にさせるのかは分からないというが、そんな作家仲間にご自身も影響を受けているようです。

「僕もあるときから開き直って楽しむようにしています。じゃないと、商品の良さがお客さんに伝わらないと思って。『売れなかったらどうしよう。今後どう生活していこう』っていう不安は、不思議とお客さんにも伝わってしまうんですよね」

そのため普段のクラフトフェアでは、お客さんと冗談ばなしを大事にして、商品の説明は積極的にはしないのだとか。

「楽しい雰囲気の中で『よく見たら、これすごいでしょ』っていうノリを目指しているんだよね。」

関心を持ってくれるお客さんはずっとブースを離れず、商品を見まわしながら楽しく話を聞いてくれるそうです。

「2か月に1回でも目の前でお客さんに商品を見てもらって、『わ~』って言われたらやっぱり嬉しいですね」

ものづくりの原点を体験する

商品が『売れる喜び』だけでなく、商品を『つくる喜び』についても教えてもらいました。

「今でもうまく作れたら達成感があるんですよ。この達成感ってとても重要で、これがあるからこそやってますね」

『できた!』という達成感がものづくりの原点だという松永さん。一般の方に向けてバードコールづくりの体験を受け入れている理由もそこにあります。

実際に工房を訪ねれば、自分だけのバードコールをつくることができます。

 

①大きさや色を選ぶ

使う木の色によって、どんぐりの雰囲気も全然違います。染めたものではなく、木そのものを活かした素敵な色合いのものばかりです。

②機械に設置、安全面を確認

回る機械を使うので、しっかり気を付けて安全を確保する。

③少しずつ丸く丸く削っていきます。

④どんぐり型に整えていく

 手を貸してもらいながらなので安心です。

⑤塗装をして、金具を入れ込み完成です。

初めての方でも、丁寧に教えていただきかわいいどんぐりのバードコールができます。

 

 

「体験っていうのは、プロの技術を自慢するわけでも、それを素人さんに押し付けるわけでもなく、どんなに時間をかけても出来上がった時の『わ!できた』という感覚を味わってほしいんです」

 

体験をしたお客さんができあがった商品を喜んでくれると、商品が売れた時と同じくらい嬉しいことなのだとか。

ぜひ皆さまも、この達成感を味わいに松永弦楽器工房へ訪れてみてください。
松永さんが楽しく、優しく教えてくれますよ。

あなたも作家としての新たな一歩を踏み出してしまうかも!?
そんな素敵な時間と体験があなたをお待ちしています。

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