Localsかつて営んでいた「鯉屋」が生まれ変わった
気さくなご夫婦がもてなす「農家民宿こいや」

亀岡市の北部に位置し、JR千代川駅から車で5分ほどの場所。
すぐ近くにはせせらぎがあり、気持ちのいい「水」の音が心を落ち着かせる。
山の麓、のどかな集落の中に「農家民宿こいや」はあります。

農家民宿こいや八木 孝弘  八木 知子

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Harvest Journey Kameoka

戦国時代には明智光秀が必勝祈願をしたとされる岩城神社の真向かいにあり、周辺・外観ともに風情の残る雰囲気の良い場所です。

「農家民宿こいや」は専業農家をされているご主人:八木孝弘さん(以下 孝)と奥さん:八木知子さん(以下 知)のお2人で経営されています。

お宿自体の魅力ももちろんですが、それ以上に魅力的なのがご主人と奥さまのお人柄。
そして、このお二人の掛け合いがとっても面白いのです。

今回の記事ではお宿の魅力に加えて、お二人の掛け合いもぜひお楽しみいただきたいと思います。
(※お二人の雰囲気が伝わるように、口調は京都弁のままで掲載しています)

「こいや」の名前の由来とは

(孝)「先々代のとき、80〜90年くらい前かな。ここで鯉屋をしてたんや。鯉屋っていうのは食用の黒い鯉のことな。昔はこの辺では食用にしててんで。当時は今みたいに高速道路があるわけやないやろ。亀岡には海の魚が入ってけーへんで、川魚を料亭とか旅館に卸しててんな。当時は儲かったと思うねんけどな、そのうち流通が発達して海の魚におされるようなって、もう廃業になってんけどな。そんなことで、今でもこの辺のおじいちゃんおばあちゃんにはここは「こいや」さんって呼ばれてんねん」

お宿の門を入ると敷地の中央には、当時の面影を残す小さな池があり、鯉が気持ちよさそうにスイスイと泳いでいます。

その池に面して建つのが現在は宿として利用されている、離れと蔵。この2つをつなげて、一棟貸しのお宿になっています。離れの玄関を上がると和製のすだれが照明を覆い、凛とした雰囲気です。

(孝)「このすだれは千代川の「京すだれ 川崎」さんからもらって。内装は腕のいい大工さんに仕立ててもらったんや。」

一面、珪藻土で和の趣のある壁。そして窓や天井に取り付けられた京すだれ。壁には真鍮で作られたトンボがあしらわれています。

農家民宿を始めたきっかけとは

(孝)「うちは専業農家なんやけど、母屋と離れがあって、離れはいわば空き家状態で、もったいないやろ。使ってないと壁が悪なったり、屋根が悪なったりしてくるやんか。それやったら、農業民宿っていうのができるいうのんで、こういう民宿したらおもろいよなっていうのがきっかけかな。

メインは農業やし、副業言うたら失礼やけど、奥さんがやるみたいな感覚で。野菜もあるし、楽しんでもらえたらいいかなって感じやな?」

(知)「せやな。農家民宿をやろうと思ったときはオリンピック前で、世間的に宿泊施設が足りひんっていうのがあって、家の敷地内でお宿ができれば自分とこの持ち物やしリスク的にもあんまりないし、やりやすいかなって。農業だけやとなかなか自然相手やから・・・」

(孝)「そうや、思い出した。結局、農業だけで計画たててやっても、台風が一回来たら時期にもよるけど100万とか変わるわけ。だって、加茂なすやったら500本とか600本とか、それが、揺れて傷だらけになって、ほんで弱るから病気も入るし、売れへんやろ。ほんで、さすがにちょっとこれはしんどいなと思ってな。民宿やったらちょっとは安定するやろ!と思ってな。ほんなら今度はコロナがきた!」

生活の安定を期待して始めた民宿も、昨今のコロナで大きな影響を受けたのだとか。しかし大きく受けた影響も、大きな笑いで吹き飛ばしてくれた八木さんご夫婦。これまでもいろんな事に挑戦してきたそうです。

(孝)「なんぼ失敗したかわからへんな。打たれて打たれても」

(知)「主人は、とにかくいろんなことをやりたいタイプで。これもやりたい! あれもやりたい! っていう中で、2人で相談してやったのは、この民宿ぐらいかな。そやな?」

(孝)「普段は相談せんと勝手にやるもんな。奥さんかて農業に関しては戦力外やもん(笑)。畑になんて来いひんで。そんな感じするやろ? 畑いる感じしないやん!(一同笑)。でもやっぱり民宿となると掃除もせなあかんし、料理とかもあるし、奥さんの力がないとなかなかできひんしね」

最初にご主人から「民宿をしよう」と言われた時、奥さんはどんなお気持ちだったのでしょうか?

(知)「やっぱり最初は不安でしたよ。お金を払ってもらって人に来てもらうってなると、ちょっとやそっとの事じゃできひんことやから。農家なのでお野菜はありますけど、食べてもらうとなるとね、飲食店もやったことがなかったし」

(孝)「最初は、やりたくない~って怒ってたな笑。そりゃしたことないんやし、知らん人も泊まりに来るしな」

(知)「でも、やりだしたら楽しいのは楽しいな」

(孝)「そやな。結構楽しいのは楽しいな」

お客さんの宿での過ごし方は?

宿に泊まられる方はどんな過ごし方をされるのでしょうか?

(孝)「みんなそれぞれ勝手に過ごしますわ。こんなとこ探して泊まりに来るぐらいやしね。散歩する人は散歩するし、ゆっくり過ごす人はゆっくり過ごすし」

(知)「なかには一緒に食事をした人もいましたよ。料理の説明をさせてもらってお話をしてたら『一緒にどう?』みたいな感じで声かけてくれはって。夫婦2人で食べるのもあれやし、とか言ってな」

(孝)「そやね。お客さんの過ごしたいように過ごしてもらいたいし、結局は人と人やねんな。夕食一緒に食べるとかもそやし。収穫体験でまた会いに行こうか? みたいになって、リピーターになってくれたりな」

宿泊される方の中には、農体験や収穫体験をされる方も多いそうです。

(知)「収穫体験は一泊二食付きの方で、お客さんが希望しはったら無料でしてもらってます。ほんまに採りたてを食べてもらいたいっていう思いだけでやってるから。夕方に採ってもらって、晩ごはんにそのまますぐ出すことも多いですね」

(孝)「都会に住んでる方だと、子どもに土を触らしてやりたいとかで体験されますね。草が生えてるとか、虫がおったり、カエルがおったりするだけで喜んでくれるもんな」

(知)「アリの行列見て、行列できるんや~みたいにな。普段はスーパーでお野菜見るだけやから、お野菜の花がこんなんなんやとか、やっぱり喜んではくれはるかな。野菜きらいな子に自分で採ったら食べてくれるかなっていう思いのお母さんとかもいはって」

(孝)「とうもろこしとか採れたてってめちゃめちゃ甘いんですやん。糖度がめちゃめちゃ高いから、とうもろこし食べてる感じじゃないもんな。あんなん普通じゃ経験できないと思うんですね。農家民宿ならではですね」

農家になったきっかけとは?

ご主人に、どうして農家になられたのかその経緯も聞いてみました。

(孝)「農家になる前は鈴鹿でバイクの契約ライダーしてたんや。レーサーやな。今はトラクター乗ってるけど。サーキットやったらレースクイーンのお姉さんがおってやで、田んぼやったらおばあちゃんしかおらんやん。だいぶ違うやろ(笑)」

と、当時を振り返るご主人。さらに奥さんとの出会いをお聞きすると・・・

(孝)「サーキットでたまたま知り合って。レースクイーンちゃうで!」

(知)「そんなん言わんでもわかるって!(笑)」

(孝)「その後、31歳でライダーを辞めて、その時にはもう長女が生まれてたから、なんとか生活せなあかんし、もう一回人生を掛けられるもんないかなと思って。そしたら、たまたま知り合いが農業やってて、それで農業もいいなと思ってはじめたな。早いもんで、もう11年目になるけど、いまでもずっと仕事してるよな、俺? まぁ、ずっと遊んでるっていうか知らんけど。やらなあかんことはやってるな」

(知)「何にもいうてないやん(笑)。やることやってくれたらいいんやから(笑)。昔から、楽しそうか、そうじゃないか、やりたいかどうかっていう直感で割りと決めているかな、この人は」

(孝)「そう、直感型やな、すべて。レースしていた時が基準やから、心配しても死なへんと思うし。借金はするかもしれんけど、何百万の借金やったら返せると思うし、普通に仕事さえなんとかしてればなんとかなると思うから、何でもできてまうわな。とにかく挑戦してみる。命までは取られへんからって。そりゃ昔ね、レーサー仲間をいっぱい亡くしてるからね。そんなこと思ったら全然平気やなって思う。それが原点やね。何するにしても」

これから目指すこととは?

最後に、今後のさらなる計画もお聞きしました。

(孝)「俺、歳行ったら鯉のビジネスもしたいねん。俺の代でなんとか復活させたいなっていう思いがあって。ただ食べる鯉は俺もあんまり食べたことないし、それやったら錦鯉とか色のついた鯉を輸出とかしてね。結構最近注目されてるから、広めたいなと」

(知)「鯉の餌やってたらいいからな(笑)」

最後の最後まで、会話の掛け合いがとっても面白いご夫婦でした。

畑に鯉に、明るいご夫婦、こだわりの貸し切り棟に癒しの自然環境などなど、たっぷりの魅力がつまった「農家民宿こいや」さん。

どっぷりと、ゆっくりと、すてきな時間を過ごせること請け合いです。

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