Localsゆっくりと時間が流れる“かめおか時間”
滞在そのものが体験になる「Farmhouse NaNa」

皆さんは亀岡市を訪れたことはありますか?
JR京都駅から快速に乗ればわずか20分。人口約8万8000人の亀岡市は、駅周辺の中心部こそ都会ですが、一歩外れれば周囲には田園風景が広がり、京都の「トカイナカ」と呼ばれています。
さらに亀岡は京野菜の一大生産地。市場に出回る京野菜の約7割が亀岡で生産されている農業のまちでもあります。
そんな亀岡市を旅するなら、やっぱり“農”のある景色を楽しんだり、“農”にまつわる体験をしてみるのがオススメです。実際に、農体験をしてみたいという方も多いのではないでしょうか?
そんな時にぜひ利用したいのが“農家民宿”。亀岡市内にはたくさんの農家民宿があって、それぞれに特徴的な体験や過ごし方を提供しています。
今回ご紹介する「Farmhouse NaNa」さんは、2018年に農家民宿を始められた亀岡の中でも新しいお宿。宿に併設された畑での収穫体験や、庭先で飼育している烏骨鶏や養蜂体験、また近隣のガラス工房でガラス吹き体験など、さまざまな体験宿泊にも対応しています。
さらには宿泊者の希望に沿った滞在をカスタマイズもしてくれる、そんなフレキシブルさも魅力です。

Farmhouse NaNa豊田幸子

https://www.harvestjourney.com/spot/209/

Harvest Journey Kameoka

行き当たりばったりでいいと思うんです
なぁなぁハウスで、なぁなぁ時間を

「私としてはね、何もせずここで寝転がっているのも良いと思うんです!」

そう話すのは、「Farmhouse NaNa」の宿主・豊田幸子さん。「Farmhouse NaNa」は亀岡市の田園地帯・保津町の小高い丘の中腹にあり、亀岡市街を見渡す景色も楽しめます。

気負わず、おのおのの時間。

「日本人ってすごくスケジュール立てて旅行するでしょ。でも外国のゲストさんって、ずっとお部屋でのんびりしたりして、過ごし方が全然違うんですよね。ここでは、本当に行き当たりばったりで楽しんでもらえれば嬉しいです」

都会に比べてゆっくりとした時間の流れる亀岡。予定を詰め込むような忙しい滞在ではなく、時間の流れに身を委ねてのんびりと過ごすような滞在がお勧めとのこと。

これまでにも多くのゲストを迎えてきた豊田さん。各々がさまざまな過ごし方をする中で、印象的だったゲストを教えてくれました。

「シンガポールから女性が一人でいらっしゃったことがありました。その方はホームステイ形式で滞在されて、一緒にごはんを食べたり、一緒に買い物をしたり、一緒にお料理もして、シンガポールの料理も作ってもらったりとか。家族のような感じでとても楽しかったですね」

宿主とゲストが、時には家族のように過ごせるのも農家民宿の魅力のひとつです。もちろん希望に応じてゲストだけでゆっくりと過ごすこともできるし、希望の滞在スタイルに合わせて、過ごし方の幅が広がるのが農家民宿の利点でもあります。

Farmhouse NaNaの名前の由来

Farmhouse NaNaの名前の由来も豊田さんのお人柄とゲストへの思いを感じます。

「名前の由来は2つあるんです。良い方とどうしようもない方と。まずはどうしようもない方からいきましょうか。それはね、『なぁなぁハウス』なんです。「なぁなぁ」でやっているんです。力ぬけるでしょ笑。できることがあれば何でもやる!というか無計画なんですよね。もう行き当たりばったりで、とにかくいろんな人に来てほしいから、周りの方の声を聞いて、いろんなことを取り入れながら少しずつ変化しています」

特に、開業当初はだんだんやりたいことが増えてきて、畑や養蜂、お庭、烏骨鶏等々、全部やっていたそうです。

たくさんの人に来てほしい! と思うからこそ、行き当たりばったりになってしまうという状況を、「行き先のない船に揺られて、わーと進んでいる」と表現されていました。

そしてFarmhouse NaNaの名前の2つ目の由来は、温かい家族の思い出からでした。

「NaNaとは娘の愛称なんです。娘の名前はひかるなんですけど、障がいをもつ息子が昔発音が少なくて、娘のことを名前で呼べなかったとき、好きなものを『なーなー』って言ってたんですね。靴下でもスイカでも。それで自分の小さくてかわいい妹のことも『なーなー』って呼んでたんです」

宿の名前を決めるときに娘さんから「文字を繰り返す名前が呼びやすく親しみやすいからいいよ」と言われ、家族の中で馴染み深い「なな」をお宿の名前につけたそうです。素敵なエピソードですね。

幼少期から今につながること

そんな豊田さんですが、出身は石川県金沢市。子どもの頃から自然あふれる田舎の雰囲気が好きだったようです。

「金沢の故郷にも子どものころは田んぼがあって、よくカエルとかを捕まえに行っていました。昔は、舗装していない道とか当たり前で、大人になってからは都会の暮らしもしましたけど、息がつまる感じで合いませんでしたね。」

社会人になってからは都会にあこがれた時期もあったようですが、今になって改めて田舎の良さや自然とむきあう暮らしが好きだったことに気づかれたそうです。

「昔は、学研の雑誌『科学と学習』というのがあって、付録で簡単な科学実験とかができたんです。中でも『植物を育てる』付録があったら一生懸命育てましたね」

子ども向け雑誌をきっかけに植物に興味を持ち、昔やったユニークな育て方を教えていただきました。

「当時、ヘチマに声をかけたら人間の言葉を理解すると言われていて、片方のヘチマには『あなたは枯れなさい』と言って、もう片方のヘチマには『いい子ね、大きくなりなさい』と言ったら育ちが全然違うということだったんです。でも『枯れなさい』と言うのはかわいそうだなと思ったので、どっちにも『いい子ね、大きくなりなさい』って言ったらものすごく大きくなったんです!!」

と楽しそうに「小さい頃から野菜を育てるのが好きだった!」と教えてくれた豊田さん。 お父さんが余った土地の一部を自分の畑として使わせてくれたそうです。

しかし、夢中になるあまり、、、「親は勉強に集中してほしかったんでしょうね、私の畑は、突然家に帰ると植木屋さんにすべて引っこ抜かれていました。親が片付けたら怒るから、植木やさんに言って片付けさせたんでしょうね」

当時はとても残念だったそうですが、その後、畑のあった場所は勉強に集中できるよう子ども部屋となり、いっそう勉強に励んだそうです。

「そのおかげで大人になって就職できたんでしょうね。親の愛情やね」と、今となっては親の気持ちを感じ、感慨深げ話されていました。

20代、ツーリング旅で出会った大好きなお宿

就職されてからは神戸市内の定時制高校で教員をされていた豊田さん。そこでツーリングという趣味ができます。

「最初はバイクに興味はなかったんです。仕事終わり帰宅時間が夜遅く、駅から歩いて帰るのが少し怖かったこともあって、通勤用にバイクの免許をとりに行こうと思ったのがきっかけです。」

その後、どっぷりとはまってしまったらしく、

「乗り出すと楽しかったんですよ。バイクがあれば、どこでもいける! 車で旅するのとは違って、バイクに乗っていると、ちょっと降りたときにだれかと一緒にしゃべれるんですよね。誰かが話しかけてきたりして、すごく楽しい出会いがありました。」v

とバイクで旅するからこその魅力を語っていただきました。

当時は少しでも休みがあったらバイクで出かける生活。そのスケジュールは過密で、仕事が夜10時に終わって大急ぎでフェリーに乗り、翌日の朝には九州や四国に到着。そこから休みの間はずっとバイクで巡って、ぎりぎり次の仕事までには帰ってきていたようです。

ツーリングで各地を周る中で泊まった、思い出深い宿のお話を聞きました。

「宿主っていいなと思うきっかけになったのが、『ON & OFF』という四国の宇和島にあった宿です。そこには数えきれないくらい通いました。宿のご主人がもともとバイク屋さんだったので、ライダーが寄って来るんです」

と当時を思い出しながら語る豊田さん。一番の魅力はオーナーさんだったそうです。

「つるっぱげのおっちゃんでね。その頃は、私もまだ若くて迷える子羊で、人生の先輩としてたくさんのことを教えてもらいました。人とのつきあい方や親の思いとかもね」

たとえば、「バイクでブレーキをかけるとき、こっちの手はお父さん、こっちの足はお母さんって思いながらブレーキかけるんだ。親は子どもの足を引っ張るものかもしれないけど、それは常に子どもの安全を思ってくれているからだからね」と、若い世代に語りかけてくれたそうです。そこに集まるライダーみんなのお父さんみたいな感じだったのでしょうね。

人生の転機となった、タイ生活

その後、結婚され亀岡に移り住むことになった豊田さん。大きな転機となったのは、旦那さんの海外赴任だったそうです。

「旦那の仕事でタイで暮らしたことが大きいですね。タイに日本企業の工場をつくるため、初期スタッフとして派遣されて、1年間だけ家族でタイへ行きました」

それまでは親が心配してパスポートも作らせてもらえなかったため、このタイでの生活が初めての海外だったそうです。それにも関わらず、不思議と不安がなかったというのは驚きました。

「不安とかは全然なくて、一生のうち今回しかないから絶対行こうと思ったんです」と語る目はとてもキラキラしていました。

タイでの生活では日本からの友人やタイの友人がたくさん家に遊びに来られたそうです。中には1年の間で日本から何回も来られた方もいたのだとか。

「タイの家がすごく大きくて、リビングだけでも20畳以上はあったんですね。お部屋もたくさんあって、その一つ一つにトイレとお風呂がついてる。だから余った部屋に泊まってもらって、風呂もトイレもあるからビジネスホテルの個室にいるような感じで過ごしてもらえましたね」

帰国後もタイの友人がたくさん日本へ遊びに来られたそう。

「日本の家はタイの家に比べてすごく狭いでしょ。もうほんとウサギ小屋みたい笑。タイの友人が泊まりに来たときに、狭いし片付けも大変で。それがきっかけで、やっぱり大きな家がいいなと思って、この家を購入しました」

お家との出会いと畑仕事

思いきって家を購入した豊田さん。ここから豊田さんの“お宿計画”が始まりました。

お家との出会いは、知り合いの不動産屋さんで偶然見つけて、昔好きだった祖父母の家を思い出す雰囲気の町並みとお家をとても気に入ったそう。

「元々ここにはおばあちゃんが一人で住んではって、ご主人がご病気だったので、相続する前に売ってしまいたいというご希望があって売りにだされていたんです。タイミングよく不動産屋さんで見つけて、運よく買わせていただきました。」

なかなか条件やお値段にあった物件が見つからなかった中での奇跡の出会いだったそうです。

Farmhouse NaNaさんのお庭にはたくさんの草花が植えられていて、ミツバチの養蜂箱が置いてあったり、烏骨鶏も数匹飼育されていたり、たくさんの果樹も植えられています。なにより畑がとてもバラエティーにあふれています。

「もともと農業経験があったとか誰かに教わったとかではないんですけどDNAが百姓だから、それなりの感覚で畑仕事をしています。自分のイメージとしては自分のおばあちゃんの畑、子どものころに遊びに行ったあの畑を再現したいなって感じかな」

とおっしゃる通り、どこか懐かしい雰囲気の畑で次々に説明をしてくれる豊田さん。

「育てている野菜は基本的には自分が食べたいものが多いですね。あとは亀岡ハーブ園さんが去年閉園した時に分けてもらったハーブを育てて、ハーブティなんかにもしています。ハーブは虫がつかないので育てやすくていいですよ」

と言って、お湯を注ぐときれいな青色に発色するマロウティーを振舞ってもらいました。とてもおいしかったです。

今後の展望は?

「今後は農家のことをもっともっと頑張りたいなと思っています。宿にももちろん来てもらいつつ、でも私は畑にいますから気軽に声かけてね、みたいな感じです笑」

畑の面白さについても聞いてみました。

「野菜づくりは無農薬・無肥料、まさに自然・天然まかせでやっているんですけど、それでもちゃんとなるんですよ。自然に雑草が大きくなるように、野菜だって自然と大きくなるんだなって」

豊田さんはサラダがお好きで、ついついサラダ野菜をたくさん作ってしまうそう。レタスや二十日大根など、「つくりすぎですね」と笑っていました。

畑やお庭だけでなく、Farmhouse NaNaにはかまど(おくどさん)もあります。かまどで炊いたごはんは絶品。現在はピザ窯も制作中です。

数多くの田舎体験ができるこの場所は、ゆっくり2~3日の滞在がおすすめです。

Farmhouse NaNaで過ごす「なぁなぁ時間」を、畑のお野菜とともに味わってみませんか?元気で楽しい豊田幸子さんが明るく迎えてくれますよ。

Harvest Journey Kameoka

Turn your phone

スマートフォン・タブレットを
縦方向に戻してください